2013年5月アーカイブ
±Light
人は光を求める生き物。
その「光」とは物質としての、そしてもうひとつ精神的な例えとして使われます。
私も常に双方の光を求めています。
今回のテーマはその物質的な「光」をいかにコントロールするかについて述べたいと思います。
衣裳にどう光を埋め込むか。
2年くらい前かな?LEDを埋めた衣裳を着たダンスパフォーマンスなどとてもカッコ良くて魅入ってしまいました。
バレエ衣裳もそういう新しいパフォーマンスができると面白いですね。
でも、今回は既存のバレエ衣裳のディテールについて。
バレエ衣装で光を埋め込む方法として、スタンダードな方法としては3種類。
①スワロフスキーなどの石系
②スパンコール
③ビーズ
です。
その光り方の違いの認識をし、それを使い分けることで、衣裳の品格やグレードが高まります。
全ては私のマニアックな研究と感覚にすぎませんが、それが私の衣裳の作り方なので説明します。
まずスワロフスキーについて。
スワロフスキーの光方は、光線が、幾つかの方向に向って強く光を放つ感じです。
星が瞬くと表現するのとにていて、スワロは照明にあたると瞬きます。
舞台上ではもっとも強い光を放つ素材です。
一方、スパンコールはメラメラした光方をします。
例えるなら、水面に光が指し、反射して水の揺れとともに光が乱反射し、メラメラっと動いているように見える様子と似ています。
そしてビーズですが、ビーズの光はとても鈍く、連続性を持たないと、その効果を発揮しません。単品で付けるよりも集合体として付けた方が美しい弱い光が生まれます。
でも、ビーズは光をつけるというよりも、衣裳のテクスチャーや、魅せる細工の技術として使用するものと私は分類しています。
…..というように、光具合の違いを分析したうえで、衣裳を作っていくと、舞台上でとても計算された効果的な衣裳となります。
舞台の照明を常に頭の中で配慮し、衣裳に付けた素材がどう効果をなすのか,,,
それを考えて制作することが、上品な光をコントロールする上で重要なことです。
キラキラ光ると綺麗だからといってスワロを使いすぎると「品の欠如」となり、尚かつその光にばかり目を奪われて、ダンサーの動きに目がいかなくなってしまう危険性があるのです。
光の足し算と引き算を上手にすることが、衣裳を作る上で大切なポイントです。
Dwell on differences,,,
『ミロのヴィーナス』のドレスを着るか、『ニケ』のドレスを着るか,,,
あなたならどちらを選びますか?
以前にもブログで書いたことがありますが、とても大事なことなので、もう一度お話したしと思います。
それは、バレエ衣裳という、踊ることを前提で作られた衣裳は素材選びがとても重要で、布の質感で、重力を消す効果が最大限に発揮できるからです。
冒頭でも上げた、彫刻のお話から『布の素材』について繋げていきたいと思います。「石の彫刻から、ナゼ布の話に結びつくの?」と驚かれるでしょう。。
でも、それを知ると芸術の豆知識としてネタにもなるので覚えておいてください。笑。
とても有名な彫刻で『ミロのヴィーナス』と、勝利の女神ともいわれ、NIKE(ナイキ)のブランド名の由来ともなっているNike(ニケ)。
二つの彫刻の共通点は?
…そう布を纏っています。
さあ、どんな生地を纏っていると思いますか?
その答えを紐解く鍵として、彫刻の膝のあたりに注目してください。
そしてミロのヴィーナスと、ニケのドレスの生地はどちらが薄いと感じますか?
答えはニケです。
風になびき、膝小僧の凹凸、筋肉が透けてみえる気がしてしまいます。
シルクジョーゼットかな? しっとりとした質感なのがうかがえます。
一方、ミロのヴィーナスはどうでしょう,,,?
透けている雰囲気はないですね。もしかしたら綿のような厚みのある布を巻いているのかもしれません。。
この2体の有名な彫刻。ミロのヴィーナスよりニケの方が、はるかに古い彫刻ですが、実は、その技術や芸術性は、ニケの方が遥かに高いのです。
彫刻で、布の素材感まで表現出来るテクニックは大変難しいのです。
ここで、ジョーゼットを使用する代表的な衣裳として、海賊メドゥーラでチュニックワンピースタイプと重ね合わせます。
どんな素材を使い、どんなドレープをとると、海賊の見せ場となるジャンプで効果的に見えるのか…それはいかに重力を消す素材の選択ができているかどうかで、踊りの印象が遥かに違います。
布の選択を誤ると、ジャンプも重くみえるし、ターンの時も布の抵抗が大きく、身体にまとわりつくだけでなく、遠心力がかかり、ターンの負担となったり。。。
なので、ニケのように、風に美しくなびくような、軽くしっとりとした布の選択が、
踊りをより美しく見せるポイントだと私は考えています。
1つ1つの素材選びから、それを完成へと持っていくのに、
私の場合、そういったオリジナルの持論や哲学を大切にしています。
マニアックすぎますね。
見た目が良ければ全て良し!
,,,ですが、私の作る衣裳には、こういった哲学があることを知っておいて頂きたいのです。
ミロのヴィーナスより、ニケになりましょう。
Go Left or Light at an fork of Ballet Art
21世紀。その10分の1は経過…
2001年のアメリカ同時多発テロという未曾有の事件の幕開けし、アフガニスタン戦争や宗教闘争、また人的な波乱ではなく日本でも東日本大震災という大きな天災がおこり、自然の猛威に、日本国民の心は震えた。。
この10年あまりで私たちの心に得たものは何でしたでしょうか…
そして20世紀後半から今世紀にかけてファッションも大きく移り変わってきました。またIT革命によりグローバルな市場経済が進展し、大資本のマーケティングと宣伝を駆使し、世界市場を手中におさめたのは、
『高級ブランド』ではなく『ファストファッション』と呼ばれる低価格ファッションでした。
『有名ブランド』というカテゴリーからまとめていくと、もはやファストファッションの勢力は高級ブランドを飲み込むムーブメントで世界の若者のハートを掴みました。
私は高級ブランドもファストファッションも大好き。
ハイとローの使い分けや、ミックスでお洒落を楽しんでいます。
そして、驚くべきことに、バレエ衣装業界でもそんな流れはやってきました。
お衣裳といえば、フルオーダーで一人一人のためにデザインし、繊細なビーズワークを施した、芸術品ともよべる、手の混んだグレードの高いモノでしたが、
今やほんの数万円でかえるお衣裳も出てきました。
そう、バレエ衣装界のファストファッションの登場です!
経済の混迷に伴い、そのムーブメントはいたしかたないことだと思います。
それを否定するわけではありません。
あっていいと思います。
要は使い分け。
発表会で量が必要な時は、レンタルや安価な衣裳で。
バレエコンクールでは、一点ものの身体にフィットした高品質なもので勝負を。
というように、用途を見極めて使い分けることが上手にお衣裳を購入していく上でのポイントです。
ロダロマでは、あいにくファストファッションなるお衣裳はご用意しておりません。
それは私が芸術畑で育ったからこそ、「真の芸術品」を作っていきたいと目指すところがあるからです。
『ダンサーは肉体の芸術家』『衣裳作家は被服の芸術家』だと思います。
『美』を生むには、時間と手間と費用がかかるのです。
子供は6歳までに色彩センスが決まってしまいます。
同時に、敏感な子は素材の善し悪しを身につけていきます。
違いのわかる大人になるか、全て同じにみえる大人になるか。
そんな成長過程の上でも、ご両親のお教室の先生の「道しるべ」が大切だと思います。
バレエ業界はどう移り変わっていくのでしょうか,,,
Fashion Measurement
美しく輝いてる女性はちゃんと自分の見せ方の演出ができている。
私は、ここ2年くらいで、パーティや会食に参加する機会が少しずつ増え、別のフィールドでお仕事をしてる方達と接する場が増えとても嬉しく思ってます。
私は、そういう場では「女性のファッション」「お人柄」「お仕事」の関連性の三点に注目し見てしまいます。
ファッションに興味がナイ女性はここでは除外して考えますが、大体ファッションをみると、その方の職種や性格が解るという面白いメジャーメントがあります。
女性はこういうの好きではないでしょうか?
自分を把握してる方は納得し、まだ自分を熟知してない方は、「え?自分はどれだろう!」って。
まず、職種はさておき性格重視で、下記の3つのカテゴリーに分類できます。
①知的で聡明で、自分を評価されることを恐れないトップを目指す女性戦士タイプは、断然、『白』!
②可愛らしさ、優しさ、ソフトさを、女性らしさとして求め平均を好む女性が選ぶのは、花柄やジョーゼット素材!
③個性で勝負。内面の個性を外見にも反映させたいと考えている女性が選ぶ色と形は、「黒でパラーンやデザインに凝ったもの」か「カラフルでコントラストの強い配色のデザイン」!
さて、それをバレエの役柄のキャラクターと衣裳で当てはめて、遊んでみます。
グランパクラシック、オーロラのお衣裳は①のカテゴリー。
ジゼル、リーズは②のカテゴリー。
パキータ、ライモンダは③のカテゴリー。
に当てはまるかしら?
そうやって、『現代女性』と『古典のキャラクター』を重ね合わせることで、
ルネサンス時代の文学などをファッションの視点から、主人公の性格を読み解いていくのは面白いかもしれませんね。
私が述べたいこと。要は、『ファッションは自分自身を語る最大の視覚的なプレゼン』になっているということ。
たくさんの脳科学者もおっしゃってるように、「人の印象は0.2秒で決まる」と!
このことの重要性を把握されているでしょうか?
バレエコンクールで舞台に歩いてきた瞬間、そう、もう踊る前から、印象は決定付けてしまっているのです。
素敵な衣裳を着るとは…
なりたい自分に変身できる(近づける)、最強のマジックなのです!
Ballet & Mode,,,
バレエとモードの接近のススメ
5月2日、ジバンシィのクリエイティブディレクター、リカルド・ティッシ氏が衣裳デザインを手がけたパリ・オペラ座の『ボレロ』が初演を迎えた。
従来のボレロはモーリス・ベジャール手がける、色彩や装飾を限りなく排除し、暗闇に浮かぶ赤い円卓に黒いタイツ,,,という「赤と黒」というイメージから、今回のクリエーターを結集した新しいボレロは「白と黒」。
リカルド手がける衣裳は、一見、身体の「骨」を表すデザイン。
そのディテールはレースなどのレリーフ調で、力強いラヴェルの音楽とは
対照的にとても繊細!
まさにモードの静かなる逆襲!?
私は思うのです。現代を生きてるバレエ団はパリ・オペラ座だけではないか?..と。
他は全て、戦後の香りが残るような,,,
私は時代が止まった変化のないデザインを『昭和的』と表現しています。
今は平成なのに、新しさや未来を感じるデザインがない!
『伝統や格式を守る』のが『芸術』。。。という勘違いに早く気付かなければなりません。
芸術は常に革新しているのです。
ピカソがキュビズムを唱えた。
マルセル・デュシャンがトイレの便器をアートだと主張した。
村上隆氏のスーパーフラットやフィギアが賞賛され、
ダミアン・ハーストのサメや牛の輪切りやホルマリン漬けが、今や世界のギャラリーを賑わす。
さぁ、バレエ芸術とは何でしょう??
幸いにも、私のクライアントは上質な方ばかり。
何かを発信しようとする気持ちと、新しいモノを受け入れる柔軟性。
モードであること。それが繊細な緊張感を与えることを解ってらっしゃいます。
数あるアトリエのHPから私に依頼してくださる理由を問えば、「オシャレで斬新なデザインが多いから!お任せするので、自由に作ってください!」と。
有り難いです!
変化させるのは難しい。でも、私が私であるために、一人一人のダンサーがその人にしかない感性を表現するために。
オシャレやモードを意識してない今あるバレエとは私はアンチな角度でいます。
今、私が蒔いてる種にどうか水をやってください。
常に枯渇状態です。気持ちが満たされない。
たくさんの光とお水を浴びて、成長したいです。
クリエーションの世界で。